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Vol.11 ブルーモ証券株式会社「日本の資産形成層に新たな長期資産形成のツールを提供する」

2023.08.15

ブルーモ証券株式会社代表取締役社長 中村 仁氏

「日本の資産形成層に新たな長期資産形成のツールを提供する」

 

– FinGATE テナントインタビュー Vol.11 –

街の再開発が進み、新しい情報・文化の発信基地として、そして資産運用・Fintech等の金融系スタートアップの集積地として注目されつつある日本橋兜町・茅場町。ここに今、金融系スタートアップの起業・成長を支援するインキュベーション施設「FinGATE」があります。現在、FinGATE BASE、FinGATE KABUTO、FinGATE KAYABA、FinGATE TERRACE、FinGATE BLOOMの5施設が整備されており、60社以上の金融系スタートアップ、行政機関、金融プロモーション団体等が入居しております。

それぞれの会社の今と未来、そしてFinGATEや日本橋兜町・茅場町に寄せる想いと期待について、話を伺ってまいります。

米国株、米国ETFを中心にして資産形成層を対象に長期資産形成を行うための証券会社が誕生しました。財務省出身でブルーモ証券株式会社を立ち上げた代表取締役社長の中村仁さんに、創業時の苦労話や今後提供するサービスなどについて伺いました。

ブルーモ証券の事業内容については、こちら。

 

日本の社会課題を解決するために起業を決意

財務省、米国留学、マッキンゼー、そして起業というキャリアパスですがもともと起業を視野にいれていましたか。

 

中村 財務省に入省したのはもともと学生時代から日本社会に対して課題感を持っていて、政策を立案する立場からそれを解決することができないかと考えたのが動機でした。
一方で、行政の立場から本当に世の中を変えられるかどうか正直よく分からないところがあったので、もし政策で自分の納得できる変革を起こすことが難しいと思ったらその時は潔く外に出ようと考えていました。外に出てからはマッキンゼーを経由し、起業して現在に至るという流れです。
起業しようと思うまでには、2017年から2019年にかけて留学していたスタンフォード大学のMBAで受けた影響が大きかったと思います。
スタンフォード大学はシリコンバレーにある学校でとても自由な空気に溢れていました。当時の同級生が彼らの興味のある分野で次々に起業していく姿を間近に見てきました。それが自分に与えた影響は少なくなかったと思います。そこで学ぶ中で財務省に戻った時、政治制度を変えることができるのだろうかという疑問が浮かんできました。そして財務省を辞めて一旦はマッキンゼーに転職したのですが、やはり自分でやりたいことに挑戦するなら起業した方が良いだろうと考えまして、この会社を設立したのです。

学生時代、日本に対して抱いていた課題感とは何だったのでしょうか。

中村 これから日本の少子高齢化が加速していく中で日本社会にさまざまな歪みが生じてくるだろうと考えました。
特に若い人たちが、明るい将来像を描けないような世の中になるのではないかという危機感を強く持っていました。少子高齢化が加速して若い世代の社会保障負担が重くなり、一方ではバブル崩壊以後の世代にとって右肩上がりで成長する日本経済は見たことがない。
これを受けて若い人たちが、「自分たちは日本に生まれて損をしたのではないか」と思ってしまうような社会になるのが嫌だなというのが学生時代の課題意識でした。

証券会社を起業する苦労

起業に際して苦労された話をお聞かせ下さい。

中村 今回金融商品取引法に基づく第一種金融商品取引業者として登録され、日本初の長期資産形成に特化した証券会社としてスタートすることになりました。ただ、証券会社を立ち上げるにはいろいろなハードルを越える必要がありました。
まずはスタートアップとしてお客様を獲得してビジネスを成り立たせなければなりません。つまりしっかりとした事業を構築する必要が当然にあります。
それともうひとつは、やはり証券会社という規制業種ですからあらかじめ定められた規制をクリアしていかなればなりません。具体的に言いますと人的体制と資本、そして事業内容が適切かどうかという点が問われます。
人的体制については、普通のスタートアップにはまずいないような、それこそ証券会社での実務経験のある人を揃えなければなりませんし、そういう人に入社してもらうのが大変でした。弊社の魅力などを根気強く説明させていただきようやくご理解いただいたとしても、今の仕事があるので転職してもらえるまでになかなか時間がかかりました。資本については4月にシードラウンドで8億円の資金調達に成功して、十分な自己資本を確保できました。また、事業内容が適切かどうかという点に関しては、経営者として規制当局から信用していただくために必要な要件をしっかり押さえるようにしてきましたので、概ね問題なく証券会社として登録していただけました。

具体的なビジネスモデルを教えて下さい。

中村 米国株、米国上場ETFを中心にして20−40代を中心とした現役世代の長期資産形成を進めるための証券会社です。とはいえ、ニューヨーク証券取引所に上場されている全銘柄を扱うわけではありません。最初は200銘柄くらいからスタートさせて、徐々に増やしていこうと考えています。取扱銘柄はたとえばアップルやウォルトディズニーなど、日本人でもよく社名を知っているような企業が中心になります。これらの銘柄を私たちが開発している「Bloomo」というアプリを通じて、誰もが簡単に売買できる環境を提供します。
誰でも利用できますが私が学生時代に抱いていた課題感という点からすれば、やはり若い資産形成層を中心にご利用いただくことを第一に想定しています。ですから売買に際してかかるコストなども出来るだけ低廉な水準を目指しました。
具体的には、銘柄を売買する際の手数料はかかりません。預かり資産の総額に対して年0.5%程度の管理料をいただくようなモデルを考えています。
本格的な業務開始はもう少し先ですが、今は弊社のホームページ上にウェイトリストへの登録をしていただくページを設けていて、登録していただいた方には正式リリースに先行してサービスをご利用いただけるようご案内を差し上げます。
このような形を取ったのはオペレーションやシステムが安定的に稼働するかどうかを慎重に見極めながら進めていく必要があるからです。業務開始と同時に一気にお客様が増えてしまうと、何かアクシデントが起こった時の対応が非常に難しくなってしまいます。なので、最初は少しずつお客様を増やしオペレーションやシステムに対する確信が持てた時に、大きくビジネスを拡大していく予定です。なお、6月時点で約1000人程度の方にご登録いただいております。

インターフェイスの簡易さとコミュニティ機能で差別化

アプリの仕組みについて教えて下さい。

中村 大きく2つの特徴があります。一つは、ポートフォリオ投資機能です。通常の証券会社で10銘柄に分散投資する場合、1銘柄ずつ買い注文を出す必要があります。つまり1度に10回の買い注文を出しますから、それを毎月1年間続けると10回×12か月=120回の注文を出す手間が必要です。
でも、Bloomoのポートフォリオ機能を使い最初にどの銘柄、どのETFに何%配分するのかを決めておけば、自動的にお客様のお金をドルにして、その比率に沿って買い付けていきます。これは複数の資産を自分で選び、長期的に積立投資をしていきたいと考えている人にとって使いやすいインターフェイスになっています。
もうひとつはコミュニティ機能です。いかにインターフェイスを使いやすくしたとしても、金融リテラシーが身に付いていないと投資行動をとりにくい面があります。
その問題を解決するために、匿名性やプライバシーに配慮しつつ、他のユーザーのポートフォリオを見ることができる機能を設けて、それを参考にして自分のポートフォリオをつくれるといったサービスを導入します。ブルーモ側でも、ウォーレン・バフェットのような著名投資家のポートフォリオも参考にできるモデルポートフォリオとして用意する予定です。
このように他の投資家のポートフォリオを見て模倣することができれば投資することへのハードルは大きく下がるでしょうし、ポートフォリオを構築した後、時間の経過と共に自分自身がどうすれば良いのかを知るうえでの参考にもなるでしょう。

兜町やFinGATEに対する期待、想いなどがあれば教えて下さい。

中村 正直なところを申しあげると、兜町がフィンテックの集積地になっていることを知らず、「フィンテック オフィス」のようなキーワードで検索している時、初めてFinGATEの存在を知ったという次第です。
フィンテック企業をさまざまな面でサポートしていただける体制でオフィスを提供していると話を伺い、お世話になることを決めました。行政書士の先生に繋いでもらったこともあります。部屋のサイズも、会社を立ち上げた時点の小さいところから、人が増えるにつれて徐々に大きな部屋に移れるようなバリエーションの豊富さもあり、フィンテックのスタートアップ企業には利便性が高いと思います。実は今のオフィスがあるKAYABAから拡張移転をする予定なのですが、次のオフィスでもFinGATEにお世話になることにしました。
FinGATEと共に、今の若年層が抱えている解決につながるような金融機関を目指し、50万ユーザー、100万ユーザーを達成していきたいと思います。

ありがとうございました。

 

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